美肌
~ 入れ墨・アートメイク除去 ~
さまざまな方法で除去します…入れ墨、アートメイク除去
入れ墨やアートメイクの治療方法
皮膚は上層の「表皮(角質含む)」と下層の「真皮」の2枚から出来ています。この2枚の内の深い部分の真皮にインクや墨汁の色素が入っている状態が入れ墨です。ここに生まれつき色素があるのが蒙古斑や太田母斑などのアザです。ですから、入れ墨の治療も基本的には太田母斑などのアザ治療と一緒です。真皮には表皮のような代謝サイクルがありませんので、一度真皮に入ってしまった色素は半永久的に残ってしまいます。
故意に入れたものは入れ墨、刺青、Tattooなどと呼んでいます。一方、交通事故などの際の擦過傷(すり傷)で地面のゴミやアスファルトの成分などが真皮内に残ってしまったもの、鉛筆で皮膚を指されて芯が皮膚内に残ってしまったものなどを「外傷性刺青」と呼んでいます。治療方法は通常の入れ墨治療と一緒です。
若気のいたりやファッションで入れたイレズミも、時代が変わり環境も変わってくると、大きな悩みの種となってしまう方も多いようです。流行遅れになったアートメイクや太すぎたり、左右のバランスの悪いものも治療対象です。眉毛やアイラインに入れたアートメイクはお化粧の手間入らずで便利でしたが、流行に合わせたお化粧ができません。
Before & After
◆ レーザー治療
この方は道路で転んだ際にアスファルトの細粒が皮膚の中に入ってしまい「入れ墨」状態になってしまいました。 このような状態を外傷性タトゥーと言います。
一般的な入れ墨治療と一緒で「QスイッチYAGレーザー」を照射しました。
1回照射後の1年後です。元々の入れ墨の色も薄かったので1回だけで完全に目立たなくなりました。もちろん再発もしません。
治療前です。
QスイッチYAGレーザー(ルートロニック社VRM)で局所麻酔を行なって照射しています。3mmスポット3.3Jです。
明らかに薄くなっていますが「まだまだ」です。
2回目の照射は3mmスポット4.0Jにパワーアップしています。
更に薄くなって来ていますがやはり「まだまだ」です。前回の照射後に3ヶ所、1mmくらいの水泡が出来てしまった、との事だったので今回、3回目の照射は3.8Jに下げて行いました。
治療前と比べると半分以上消えていますが「まだまだ」です。今回、4回目も3mmスポット3.8Jで照射しました。
更に薄くはなっていますが、劇的ではなく「徐々に」です。今回、5回目は2mmスポット6.0Jで照射しました。
今回、6回目は2mmスポット6.4Jで照射しました。水泡形成は起きていません。
「僅かに残っている」という程度まで消えています。今回からレーザーはJeisys社のトライビームです。7回目は3mmスポット5.2Jで照射しました。
7回照射後の状態、皮下の血管と同化して殆ど入れ墨と分からないレベルまで消えています。これで治療は終了となりました。
患者様も満足との事でした。水泡による瘢痕形成も全くありませんでした。
治療前
1回目レーザー照射後、約3ヶ月。
入れ墨の色は明らかに薄くなっていますがレーザー照射による色素沈着が現れています。
2回目レーザー照射後、約4ヶ月。まだ、色素沈着は残っています。
3回目レーザー照射後、約8ヶ月。入れ墨の黒い色は殆ど消えていますが入れ墨の「柄」が判ります。
4回目レーザー照射後、約1年半。
殆ど入れ墨が入っていたとは分からない状態になっていると思います。
ここまできれいになるには2年以上がかかっています。
患者様も大満足だと言っていました。
入れ墨消しの治療にはQスイッチYAGレーザーが第一選択です。アメリカでは「タトウーレーザー」とも呼ばれています。ここで使用するレーザーは黒い色に主に反応しますので、このような緑色の入れ墨では多少薄くはなりますが消えません。当院ではこのようなカラフルな入れ墨に対しては最初からレーザー治療をお勧めしません。
これは黒い色素以外にも赤、白、黄色などの色素が入っているタトゥーです。通常はレーザー治療の対象ではないのですが、結果的にはきれいさっぱり色素が無くなっています。これはアメリカでの症例写真なのですが、アメリカで使用されている入れ墨用のインクは日本のものと違ってレーザーで分解吸収されやすいもののようです。アメリカでタトゥーを入れて帰国した方はレーザー治療の対象となる可能性があります。QスイッチYAGレーザーを7回照射しています。
これは黒い色素だけの入れ墨ですのでQスイッチYAGレーザーの最も良い適応です。5回の照射できれいになっています。色素沈着もありません。
これも黒い色だけの入れ墨なのできれいになっています。QスイッチYAGレーザーを5回照射しています。右側の治療後の写真をよくよく見ると入れ墨の入っていた部分の皮膚が少し白っぽくなっています。これは「脱色素斑」と言って通常の皮膚の肌色がレーザー治療によって薄くなってしまう現象です。もともと色黒の方では少し気になる事もあります。
これは黒と水色の2色の入れ墨です。10回以上QスイッチYAGレーザーで治療していますが、黒以外は「薄くはなったけれども残っている」状態です。左側の治療前よりは改善してはいますが、これで満足な患者様はいないと思います。やはり最初から切除縫合などの別の治療をお勧めする症例です。
◆ 切除
治療前
1回目終了後
1回目切除皮膚
2回目終了後
2回目切除皮膚
3回目終了後
3回目の切除皮膚
4回目終了後、合計2年かかりました
4回目切除皮膚
腰部に黒、黄色、緑、赤の入れ墨が入っています。
2回に分けての分割切除を行いました。
女性の腰部は比較的皮膚に余裕があり、皮下脂肪も多い部位ですので切除は容易です。
1回目の切除組織、約80%は切除出来ました。
1回目切除後、約5ヶ月の状態。
皮膚に余裕が出来たので2回目の切除を行いました。
2回目の切除組織。完全に取りきる事が出来ました。
2回目切除後、約3ヶ月の状態。
線状の傷となり日常生活には全く支障ありません。
「交通事故で大怪我をしました」と言い訳すれば分かりません。
腰部に入っている入れ墨です。
黒の他にも紫が入っているのでレーザーでは完全に消せません。
2回に分けての分割切除を選択しました。
1回目の切除組織です。皮下脂肪も含めて切除します。
1回目の切除から約10ヶ月経過しています。
(仕事の関係で遅くなりました。通常は3~6ヶ月で2回目の切除が可能です)
2回目の切除組織です。縦方向だけでなく横方向にも三角形で2カ所切除しています。
2回目切除後、約3ヶ月の傷です。
まだ赤みがありますが、引きつれ感などは全くなくなり日常生活には支障がありません。
1本ではない「樹枝状の傷跡」に関しては「交通事故で大怪我をした」とか
「有刺鉄線に裸で接触して出来た傷跡」などと言い訳は出来ます。
社会生活上も温泉やプールなどに入れない、というストレスからも解放され、患者様としては満足との事でした。
この方は赤、緑、黒の3色の入れ墨で広範囲でしたので、切除縫合を行っています。本人のご希望で1回だけでの切除を行いました。入れ墨の幅が広めだったので縫い合わせた傷口の緊張が高く、少し幅が拡がった傷口となっていますが、1度だけの治療で入れ墨は取れています。線状の傷は残ってしまいますが色や入れ墨の入っている深さに関係なく治療できるのが「切除縫合手術」のメリットです。線状の傷を他人見られた場合は「昔の交通事故の傷跡です」とか「骨折を整形外科で治療した後の傷です」と言い訳できます。体の線状の傷を見ても誰も「以前にここに入れ墨が入っていたはず」とは思いません。実際の治療は歯科のような局所麻酔を行い、入れ墨の皮膚ごと切除して断端を縫合します。抜糸は1週間後です。抜糸後3ヶ月は傷がきれいになる茶色いテープを貼っていただき、過度な運動やスポーツは控えてもらっています。
上の写真と同じ患者様です。この場合は切除する部分が大きくないので、1回で治療は終了していますし、傷口への緊張(テンション)もあまり強くないので傷は比較的きれいな1本の線となっています。傷周囲が白っぽくなっているのは抜糸後傷を目立たなくするテープを貼っていたために、その部分だけ日焼けしなかったためです。
治療前→上腕の入れ墨です。ご存知のようにレーザーできれいになると約束出来るのは色が黒のものだけです。このように「赤」「オレンジ」「青」「黄色」などが入っているとレーザーを照射しても全体的に色が薄くはなりますが、満足出来るほどきれいにはなりません。上腕は皮膚の余裕のある部位ですので、この患者様の場合は切除縫合を行いました。
1回目手術後→1回目の切除縫合後1ヶ月の写真です。この患者様のように入れ墨の範囲が広い(横方向の幅が大きい)場合は1回だけの切除では全てを取りきれませんので、2回に分けて切除縫合を行う計画を立てました。(このように複数回に分けて切除する治療方法をSerial Excisionと呼んでいます)1回の切除縫合で2/3程度の入れ墨が無くなりました。傷口は1本の線状の傷となっていますが、治療前の入れ墨の長さと比べると、随分と傷が長くなってしまうのが弱点です。
2回目手術後→2回目の切除縫合後1ヶ月の写真です。まだ、傷口の赤みがありますが入れ墨は完全に無くなっています。傷周囲の皮膚の「横線」はテープ跡です。どのような手術でも抜糸後2~3ヶ月は傷をきれいに、目立たなくするためのテープを貼ってもらいます。(最近では美容外科、形成外科だけでなく帝王切開や虫垂炎手術後の傷跡にも使用されています)
1年後→2回目の手術後1年以上経過しています。傷の赤みは完全に消えています。皮膚のツッパリ感もありません。ただし、所々傷の「横幅」が拡大している部分があります。切除縫合の治療ではどうしても皮膚をかなりのテンションで引き寄せますので、「傷口が開く訳ではないのですが、傷口の皮膚が横方向に引っ張られて傷の幅が拡大する」ことがあり得ます。この患者様の場合はこれで十分満足ということでした。もちろん希望があればこの傷を再度切除縫合して、より目立たなく(傷の横幅を細く)することも可能です。このような線状の傷は「昔に骨折した際に整形外科で手術を受けた時の傷です」などと言い訳する事が可能です。このような線状の傷をみても「昔この人は入れ墨が入っていたのだろう」と考える人は誰もいないと思います。
治療前…この患者様の入れ墨は上腕に黒一色だけのものでしたが、普通はレーザー治療をお勧めするのですが、仕事の関係で「出来るだけ早く入れ墨を無くしたい、傷は残っても構わない」という条件だったので入れ墨の皮膚ごと切除縫合する治療を選択しました。レーザー治療の場合は3ヶ月毎に5回前後の治療が必要となりますので、1年半以上かかる事が一般的です。
1回目…切除と言っても横幅がある入れ墨でしたので、1回だけは切除しきれないので、2回に分けて治療を行う計画を立てました。写真は手術後1週間の抜糸前の画像です。糸がまだ付いています。糸は連続縫合してありますので、1針ずつ縫合していません。手術後はこの写真のように内出血が2週間程度あります。手術後1~2週間は皮膚が突っ張った感じが残ります。
2回目…1回目の手術後3~6ヶ月で皮膚が伸びてきて余裕が出てきますので、その頃に2回目の手術を計画します。この患者様の場合は仕事の関係で8ヶ月後に2回目の切除を行いました。写真は抜糸直後のものです。やはり内出血が残っており糸の跡も見えますが、これらは完全に消えてなくなります。かなり傷口の皮膚にテンションがかかっています。傷は最終的には1本の線となります。
治療前…手術前の写真です。上腕での入れ墨だったのですが、縦長(上腕の長軸方向)の入れ墨ではなかったので、横方向の傷として半袖シャツでも傷が目立たないようにデザインしました。
手術後1週間…手術後1週間(抜糸直後)の写真です。黄色や紫の部分は内出血の跡ですが、1週間程度で消えます。
手術後1週間(抜糸直後)…手術後最低3ヶ月はこのようにテープ(3M社製マイクロポアテープ)を傷口に対して直角方向に貼ってもらいます。こうする事によって傷の拡大(傷の幅が広がる)を予防します。
治療後1ヶ月…治療後1ヶ月の写真です。傷の両端が少し盛り上がっています。このような状態を「ドッグイヤー(犬の耳)」と呼んでいます。入れ墨の皮膚を切除縫合した際の「皮膚の余り」のようなものです。これは3~6ヶ月で平坦化して目立たなくなりますので、心配ありません。傷口の周囲の皮膚のシワは直前まで貼っていたマイクロポアテープによるものですので、心配ありません。
◆ 皮膚削除術
治療前。色は黒だけでしたが1回だけでの治療をご希望でした。
削り取った皮膚組織
削皮術を行った直後
約1ヶ月半後。殆ど上皮化しています。
約3ヶ月後。地肌の色が白い方ほど治療後はきれいに治る傾向にあります。
治療前
削皮後約10日、まだ完全には上皮化していません。
約1ヶ月後。完全に上皮化していますが、赤く少し腫れた軽度の肥厚性瘢痕となっています。
約6ヶ月後。下方、横方向に線状の肥厚性瘢痕が残っています。ステロイド注射(ケナコルト)を施行しました。
約1年2ヶ月後。赤みと腫れは改善しましたが、色素沈着した瘢痕となって治りました。痛みや痒みもなく、引きつれ感もありません。患者様も満足とのことでした。
◆ 皮膚移植
この方は赤、緑、黄色、オレンジなどの黒い部分がほとんど無いカラフルなタトゥーです。もちろんQスイッチYAGレーザーの対象ではありませんし、何回かに分けて切除縫合することも場所的に無理です。(肩関節や前胸部は皮膚の余裕が少なく切除縫合に適さない場所です。特に痩せている男性では尚更です。)そこでこの方の場合は昔ながらの皮膚移植を行いました。皮膚は通常太ももの外側からデルマトームという専用の器械(カンナのようなもの)で薄く採取してきます。皮膚を採取された太ももの部分は皮膚が全層で無くなっている訳ではありませんので、21週間程度で皮膚が再生されます。採取直後は擦り傷状態と考えて下さい。入れ墨の部分の皮膚は全層(皮下脂肪が見えるまでの深さ)で切除します。切除した部分に採取した皮膚を貼り付けて、何カ所も縫合して固定します。移植された皮膚が生着するまでには10日程度はかかりますので、その期間は患部の安静が必要です。翌日からの患部の運動は不可です。入れ墨が広範囲で移植する皮膚の面積が足りない場合には「メッシュ」と言って採取した皮膚をメッシュ状に穴を開けて、その分皮膚の伸展性を高めて小さな皮膚でも広範囲をカバーできるような細工を追加します。この方の場合も少しメッシュ加工を施していますので、皮膚表面にメッシュの穴が点状に跡となって見えます。右の写真は手術後1ヶ月の状態です。この治療は全身麻酔下で行います。入院不要で2時間程度で終了します。抜糸は10日目以降です。
左上腕の入れ墨の患者様ですが、黒だけでなく、赤も入っていたのでレーザーでは完全には消せません。また、入れ墨の横幅も12センチと広かったために分割切除(何回かに分けて入れ墨を皮膚毎切除して皮膚を縫合する方法)も3回以上はかかる事が予想たので皮膚移植を選択しました。
ドナーは太もも外側です。
最初は1週間程度の安静固定が必要ですが、1回だけの手術で終わりますし、切除縫合はしませんので明らかな引きつれ感はありません。「幼少時に火傷をした跡です」と言い訳が可能です。
まだ、手術後1年で赤みや皮膚の盛り上がりありますが、もう2~3年も経過するともっと目立たなくなります。入れ墨を消すまでの期限がある方には1つの選択肢です。
(1)治療前です。既にレーザー治療を2回受けていますが、結局赤色は消えないので皮膚移植を選択した方です。
(2)入れ墨の入っている部分の皮膚を全層に切除しています。見えているのは筋肉などです。
(3)耳の後部から採取した皮膚(全層)を貼り付けて縫合しています。長く残してある糸はこの後のタイオーバー用の糸です。
(4)患部に皮膚が密着するように綿球を置いてそれを糸で固定します(タイオーバー固定と言います)。7~10日この状態をキープします。この期間は患部を動かす事は避けてもらいます。
(5)治療後約1ヶ月の状態です。まだ、皮膚の赤みが残っています。時間の経過とともに周りの皮膚と馴染んできます。
症例写真をもっと詳しく見る
治療のポイント
入れ墨を目立たなくする方法には細かく分けて以下の6種類があります。入れ墨消し、と言うと直ぐにレーザー治療を思い浮かべてしまいますが、当院での治療実績はレーザー治療が半分、その他の治療方法が半分くらいです。
Qスイッチ ヤグレーザー |
切除縫合 | 皮膚削除 (アブレージョン) |
皮膚移植 | |
---|---|---|---|---|
麻酔 | 局所麻酔 | 局所麻酔 | 局所麻酔又は 全身麻酔 |
局所麻酔又は 全身麻酔 |
治療回数 | 2~3ヶ月毎に 数回 |
1~3回 | 基本的に1回 | 1回 |
ドナー (皮膚採取 部位) |
無し | 無し | 無し | 有り (大腿外側が一般的) |
傷、瘢痕 | 明らかな傷は残らない | 線状の傷として残る。 | 有り、場合によってはケロイド状になる。 | パッチワーク状に残る。ドナーは軽いヤケド跡のような皮膚となる。 |
色素沈着 色素脱失 |
可能性有り | 無し | 可能性有り | 可能性有り |
当院での 患者様数 |
1位 | 2位 | 4位 | 3位 |
料金 | 回数が多いと高くなる | 比較的安価 | 安価 | ハガキ1枚で50万円程度 |
患者様 満足度 |
色素沈着、色素脱失が目立たなければ高い | 線状の傷が残ることを納得出来れば高い | 傷跡がケロイド状となった場合は低い | 広範囲を1回で治療できるので高い |
~レーザー治療を動画でご紹介~
1.QスイッチYAGレーザーで消す
最新のレーザーとして韓国ジェイシス社製の「TRI BEAM」という機種を導入(2021年11月)しています。流行りのピコレーザーではありません。従来通りのQスイッチYAGレーザーですが「ガウシアン」型のレーザー光が出力できる製品です。ガウシアンとはレーザー光の形の1つで下図のように三角錐形のピークのあるタイプになります。ガウシアン型のレーザー光が出力出来る現行機種は僕の知る限りジェイシス社のTRI BEAMだけです。
一方、従来から普及しているのは「トップハット」型という平坦でピークのない光形になります(下図参照)。このタイプは照射範囲に均等にレーザーが照射されるので加齢性シミなどの表在性疾患には効果的な光形と言えますが「入れ墨」「アートメイク」「太田母斑」「ADM」「蒙古斑」「ホクロ」などの真皮深層に色素性疾患にはガウシアンが圧倒的に効果的と言えます。
入れ墨消しにはQスイッチYAGレーザーは最も一般的な治療方法です。
欠点は「麻酔が必要」「3ヶ月以上の治療間隔で複数回の治療が必要」「黒以外の色の入れ墨には効果が低い」という点です。レーザーを照射した瞬間にも色は薄くなりますが、レーザーによって分解された(小さくなった)入れ墨の色素がマクロファージ(お掃除細胞)によって貪食、排除されるのに3ヶ月程度かかりますので、治療の間隔は3ヶ月以上(どうしてもお急ぎの場合は2ヶ月)をお願いしています。
治療間隔が3ヶ月以上に長くなる分には一向に構いません。
ご存じかもしれませんが、入れ墨治療に用いるレーザーは主に「入れ墨の色に反応させる」タイプのものです。殆どのレーザーは黒い色は反応しますが、黒以外の色では効果が落ちます。
赤い色にも反応する波長(QスイッチYAGの532nmやダイレーザーの585nm)のレーザーもあるのですが、波長の関係で深達性に劣ります。具体的にはレーザー光が真皮深層にまで届かない、という事です。ですから、黒一色の入れ墨は回数さえかければ最終的には消えますが、黒以外の色が入っている入れ墨では、最終的に完全に色が無くなるという保証が出来ません。
数年前から話題になって普及が進んでいる「ピコレーザー」ですが、発売当初は「黒以外の色の入れ墨でも完全に消える」というキャッチフレーズでメーカーが売り込んでいましたが真っ赤な嘘でした。ピコレーザーが発売されてから6年以上経ちますが学会でもメーカーのサイトでも「黒以外の色の入れ墨が完全に消えた」症例写真は見たことがありません。また、従来のQスイッチYAGレーザーならば5回かかった入れ墨がピコレーザーならば3回で消えた、という症例写真も見たことがありません。理論上はピコレーザーの方が1回あたりの効果は高いと言われていますが光形はトップハットです。
ピコレーザーよりもガウシアン、これが僕の信条です。
多色の入れ墨のレーザー治療では「黒い部分は完全に色が消えたけれども緑やオレンジの部分は薄くはなったが色が残ってしまった」という結果になります。黒以外の色が入っている入れ墨では後述の切除縫合や皮膚移植、皮膚削除などもお勧めしています。
一般的なQスイッチレーザーには「ルビー694nm」「アレキサンドライト755nm」「YAGヤグ1064nm」の3つがあります。いずれもが入れ墨治療に使用出来るのですが、その波長(波長の数字が大きいほど皮膚の深部まで作用する)特性のために1064nmという波長のレーザーだけを導入しています。
上の画像のQスイッチYAGレーザーはHOYA社の「MEDLIGHT」別名「Tattoo Laser」とも呼ばれていました。アメリカ製で初めての本格的に入れ墨が取れる、という機種だったと記憶しています。当院でも2020年までは稼働していたのですが、部品の供給等がなくなり現在は稼働していません。これも光形はガウシアンでした。この機種が一番入れ墨がキレイに早く消えた印象を持っています。
レーザーに付きものの副作用としては色素沈着や色素脱失、水泡形成、瘢痕化などがあります。(副作用の項で詳述)
2.切除縫合で消す
この方法も入れ墨の色に関係無く、治療できます。1回だけの手術で終了する場合と、広範囲(幅が広い)の入れ墨では少しずつ2~3回に分けて切除(Serial Excision)する場合に分けられます。
1回で消せる皮膚切除範囲は部位や皮膚の伸展度によって違ってきますが、2~5センチ幅が目安です。肘や肩の関節部分ではもう少し切除できる幅が制限されます。入れ墨の入っている部分の皮膚を全層(皮下脂肪が見えるまで)で切除して、左右の皮下を剥離して縫い寄せる際の余裕を作成してから縫合します。切除する場合は傷口が平らになるように「紡錘形」に切除する必要がありますので、傷の長さは入れ墨の入っている直線的な長さよりも多少長くなります。(紡錘形の弧の曲線部分を直線にした距離が傷の長さとなります)
約1週間後に抜糸が必要で、抜糸後3ヶ月は傷口専用のテープ(3M茶色テープ)を貼ってもらいます。特に関節に近い部分の傷ではスポーツや過激な運動は控えてもらっています。また、抜糸後に皮膚が伸ばされてしまう事を考慮して「真皮縫合」と言ってわざと傷口を盛り上げた状態で縫合します。数ヶ月後には傷は平らになってきます。
この方法は意外と傷が目立たず、入れ墨の色(黒以外でも問題なくきれいに出来る)や濃さに関係なく消すことが可能ですので、当院ではレーザー治療についで患者様の数が多い治療方法です。線状となった傷口は腕や肩、太ももなどであれば「怪我をして骨折した時に整形外科で治療をした際の傷です」と言ってごまかすことが可能です。一般の方は線状の傷を見て「昔その部分に入れ墨が入っていたんだ」とは思いません。
3.皮膚移植で消す
前項の切除縫合が不可能なくらいの広範囲(上腕全周性、背中、胸など)の入れ墨や治療期限が限られている場合には非常に有効な方法です。
ドナー(皮膚を採取してくる部位)は太もも外側が一般的です。お尻から皮膚を採取するとイスに座った際の痛みが気になります。通常は皮膚を全部(全層、すなわち真皮と表皮)採取してしまうと皮膚の欠損を生じますので「分層植皮」と言って皮膚の「表皮全部と真皮の上層の一部」を採取して来ます。(入れ墨の面積が狭い場合は全層植皮を行う場合もあります。)
ドナー部分は上皮化と言って残った真皮層から新しい皮膚が再生してきます。ただし、再生した皮膚は「全く元通りの皮膚の状態」では無く、手術後しばらくは色素沈着した皮膚となったり、数年後には少し皮膚の色が抜けた(色素脱失)状態になったりしますが、長い目で見ればそれ程気にならないレベルだと思います。ドナーの部分は「子供の頃に火傷をしてしまった跡です。」と言えば誰もが納得すると思います。
実際の治療では入れ墨の部分の皮膚を全て切除します。ですから入れ墨の色や入っている深さには関係なく治療できます。入れ墨を切除した部分にドナーから採取した皮膚を貼り付けて縫合します。治療後7~10日程度で植皮した皮膚が生着しますが、それまでの期間は患部の安静が必要です。腕や肩の皮膚移植の場合は車の運転や腕を使う仕事は1週間程度控えてもらっています。
面積の小さい皮膚でより広範囲な部位を手術する方法として、「メッシュグラフト」という方法があります。これは採取した皮膚をメッシュダーマトームという特殊な機器にを使って「メッシュ状」にして伸展性を獲得して、より広範囲をカバーする方法です。皮膚表面が多少きれいではなくなりますが、金銭的にもドナー的にもメリットのあるやり方です。
ドナーの皮膚と元々の入れ墨部分の皮膚とでは「皮膚の色」「皮膚の厚み」が微妙に違っていますし、皮膚を切除縫合していますので縫合部は全周性の線状の傷となります。植皮された部分の皮膚は初期には「色素沈着」や「瘢痕化」する可能性が高いですし、長期的には「色素脱失」する可能性もあります。ただし、これもやはり「子供の頃に火傷してしまった跡です。」と言い訳する事が可能です。
4.皮膚削除で消す
レーザーではなく機械的に入れ墨の入っている皮膚を削り取る方法です。レーザー治療が行われる前までは割合ポピュラーな方法でした。専用の医療用カミソリで皮膚上部を削ったり(皮膚移植の際の分層植皮と同じ原理です)、アブレージョンといって医療用ダイアモンドで出来たヤスリで皮膚を削ります。
CO2レーザーと違って皮膚全層は削りませんし(治療後でも皮膚は残っています)、皮膚に熱作用をあまり及ぼしませんので、熱傷によるケロイド様の皮膚になってしまう可能性は低いのですが、やはり全く普通の皮膚と同じ訳にはいきません。少し皮膚が盛り上がったり、赤くなったりする肥厚性瘢痕の可能性があります。また、皮膚の真皮深層にまで入れ墨の色素が入っている場合は完全に取り切れない場合があります。(そのような場合では皮膚削除を行った上からQスイッチヤグレーザーを照射する場合もあります)。現在ではあまり行われていない方法ですが、「背中や臀部などの皮膚の厚い」部位の入れ墨に対しては適応があると考えています。
副作用や後遺症
- 色素沈着=患部の皮膚の色が治療前よりも黒くなってしまう(メラニンが増えた)状態の事です。主にQスイッチヤグレーザーを使用した場合や皮膚移植の場合に起こり得ます。シミのレーザー治療などでも起こるポピュラーな現象で、特に「もともと色黒の方」「日焼けをすると直ぐに皮膚が黒くなってなかなか元の肌色に戻らない方」というスキンタイプの患者様に起きやすいです。治療後の紫外線カットやメラニン色素を抑えるハイドロキノンクリーム、トレチノイン酸クリームなどで対処します。入れ墨治療で最も多いトラブルだと思います。時間の経過とともに徐々に目立たなくなりますが、全く元の皮膚に戻らないで色素沈着が残ってしまう場合もあり得ます。
- 色素脱失=Qスイッチヤグレーザーを複数回照射したり、CO2レーザーを使用した場合などに元々の皮膚のメラニン色素が減少しています現象です。やはり「もともと色黒の方」「日焼けをすると直ぐに皮膚が黒くなってなかなか元の肌色に戻らない方」というスキンタイプの患者様に起きやすい症状です。一度、皮膚の色が白っぽくなった場合は完全には元の皮膚色には戻りません。
- 色素残存=通常の入れ墨では問題ないのですが、皮膚のかなり深い部分にまで入れ墨の色が入っている場合では黒い色だったとしてもレーザー光が届かなくて、色素が残存する可能性があります。具体的には背中や臀部の皮膚は他の部位の皮膚と比較してかなり厚みがあり、5ミリ近い厚さの方がいます。そのような部位の入れ墨では薄く色が残存してしまう可能性があります。(ただし、現実的には5ミリの深さにまで色が入っている事は考えられませんが)
- 変色=入れ墨の色素の中に不純物が含まれている場合に起こり得ます。日本国内で使用されているインクでは無いようですが、外国製のインクを使用された患者様で過去10年間で2名に変色がありました。具体的にはQスイッチヤグレーザーを照射すると「黒が赤茶に変色した」「赤が茶に変色した」事があります。照射した瞬間に色が変わりますので直ぐに判別できます。変色してしまった部分はレーザーではきれいにならない事が予想されるので、別の方法での治療となります。
- 瘢痕形成=通常の皮膚ではなく、「テカテカして光沢があったり」「通常よりも白っぽい皮膚」の事を瘢痕と呼んでいます。QスイッチヤグレーザーやCO2レーザーを使用した場合や皮膚移植のドナーなどに見られます。一度瘢痕となった場合は時間の経過とともに徐々に目立たなくなる事が多いのですが、全く元の皮膚には戻りません。
- 肥厚性瘢痕=傷跡やレーザーの照射部位が赤みを帯びて盛り上がったりする現象です。体質やレーザーの出力が関係します。Qスイッチヤグレーザーでは起こりにくいですが、CO2レーザーでは起こりやすいです。ステロイド注射やステロイドテープなどで治療します。時間の経過とともに徐々に目立たなくなりますが、全く元の皮膚に戻る事はありません。
- ケロイド=通り越してケロイドとなります。ケロイドとは増殖性に傷が赤く盛り上がり、場合によっては痛みや痒みを伴います。やはりステロイド注射やステロイドテープ、シリコンシート、内服薬(リザベン)などで治療します。時間の経過とともに徐々に目立たなくなりますが、全く元の皮膚に戻る事はありません。
施術の流れ
1.カウンセリング
経験豊富な医師により、的確なカウンセリング、アドバイスを行います。
入れ墨が「色が黒だけかどうか」「消すまでに期限があるかどうか」「入っている場所」「皮膚の状態」「ご予算」などをお聞きして患者様にとって最適なプランを決めていきます。
2.実際の治療
入れ墨の色が黒だけの場合は殆どの方がレーザー治療を選択されます。
最新のピコレーザーを使用しても青や緑、黄色などの色の刺青が完全に消えた症例は見たことがありません。ただし、多少色が残っていても「薄くなれば目立たないので、それで満足」という場合もあります。黒以外の色が入っている場合は原則的には「切除縫合」「皮膚削除」「皮膚移植」などの適応となります。
3.アフターケア
レーザー治療の場合はステロイド軟膏等を塗ってもらい、3ヶ月以上待ってもらいます。特に通院は不要です。
マクロファージによる貪食作用によって時間の経過とともに徐々に刺青の色が薄くなってきます。切除縫合や皮膚移植の場合は通常1週間後に抜糸が必要です。その後は傷の安静のためのテープ固定などを行います。皮膚削除の場合はガーゼ交換に2~3回(2~3日毎)来院して頂く必要があります。自宅での治療(フィブラストスプレー等)が必要な場合もあります。
よくある質問
入れ墨はどのように治療するのですか?
入れ墨の治療は3つの方法があります。1つは、レーザーによる治療、2つ目は切除による治療、三つ目は皮膚を移植する方法です。状態や入れ墨の範囲・大きさを考慮しながら適切な治療法を選択し治療を行います。
施術費用
- 基本料金は以下の表中の通りですが、レーザー治療や切除縫合治療で面積が広い場合は割引き価格となります。
- 正確な料金は診察の上で決定しますので、表中の料金はあくまでも目安です。また、広範囲な治療や皮膚移植では全身麻酔代(¥110,000)、検査代(¥22,000)が別に必要となる場合もあります。
Qスイッチヤグレーザー | 切除縫合(分割切除術) | 皮膚移植 | 皮膚削除(アブレージョン) | |
---|---|---|---|---|
お勧め度 | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆ | ☆☆ |
基本料金 | 1mm 1,100円
キャンペーン |
長さ1cm当たり 33,000円 |
ハガキ1枚分 550,000円 (メッシュの場合は同じ料金でより広範囲の治療が可能) |
1×1cm 11,000円 |
同一部位2回目 以降の料金 |
1回目と同じ (ただし、6回目以降は安くなる場合有り) |
1回目の 40%程度 |
1回で終了 | 1回で終了 |
500円玉サイズ | 22,000円 | 110,000円 | 適応無し | 33,000円 程度 |
手のひらサイズ | 55,000円~ | 220,000円~ | ハガキ1枚 (550,000円) |
88,000円 程度 |
上腕半周 | 110,000円~ | 220,000円~、 もしくは適応無し |
ハガキ1~2枚分 (550,000円~) |
適応無し |
胸元全体 | 220,000円~ | 全体では適応無し、部分的には適応有り | ハガキ2~3枚以上、2回に分けての皮膚移植が必要な場合あり | 適応無し |
背中全体 | 220,000円~ | 全体では適応無し、部分的には適応有り | ハガキ4枚以上、2回以上に分けての皮膚移植が必要 | 数回に分けて可能。 550,000円~ |
腰部全体 | 220,000円~ | 全体では適応無し、部分的には適応有り | ハガキ3枚以上、2回に分けての皮膚移植が必要な場合あり | 数回に分けて可能。 330,000円~ |