ヒアルロン酸注入による豊胸

ヒアルロン酸注入による豊胸術 (※現在は行っておりません)

歴史

日本国内では2006年頃から行われている方法です。実はヒアルロン酸注入による豊胸手術はアメリカでは禁止、2011年8月からはフランスでもヒアルロン酸注入による豊胸術が禁止されています。
日本国内でも厚生労働省が正式には認可している治療方法ではありません。あくまでも自己責任で行なっている治療方法です。
理論上は徐々に吸収され最終的には無くなってしまう、と言われてきましたが実際には100%吸収されて元通りになってしまう、という経験は殆どありません。
注入したヒアルロン酸はある程度は永続的に残る印象を持っています。
超音波エコーによる画像にも示したように大量のヒアルロン酸を注入すると被膜で覆われたヒアルロン酸が「しこり」になってしまい何年経っても吸収されずに残存する事が分かってきました。
これは注入量に比例しますので、片胸30cc以上(僕の経験上の推測ですが)注入した場合はある程度は吸収されずに半永久的に残ると考えています。
アメリカやフランスで禁止されている理由としては発癌性などの危険性が直接指摘された訳ではなく「乳ガン検診(特にマンモグラフィ)の際に注入されたヒアルロン酸が検査の妨げになる可能性が高い」「注入されたヒアルロン酸が授乳の際に乳児に移行してしまう可能性がある」などの理由です。
当院でもヒアルロン酸注入を行った患者様の乳ガン検診(超音波エコー)を行っていますが、乳腺外科専門医が診れば特別に困る症例はなさそうです。一方、マンモグラフィでは判別が困難になる可能性が指摘されています。
フランスの使用禁止措置に伴いガルデラマ社(旧QMED社)は豊胸用ヒアルロン酸のマクロレーンを2016年6月に廃番としましたので、現在ではマクロレーンは入手出来ません。

マクロレーン

ハイアコープ

ドイツのBio science社のハイアコープという製剤です。
2016年6月まで流通していたガルデルマ社のマクロレーンVRF20と成分的には殆ど同一との事です(輸入代行会社調べ)。
現在、豊胸用のヒアルロン酸はこれが主流だと思います。皮膚のシワ注入用のジュビダームビスタウルトラXCなどと濃度は殆ど変わりませんが、「粒子が大きく」なっており吸収されにくい構造になっています。
CEマーク(ヨーロッパでの認可、製品の安全性を証明するものではありません)は取得していますが、アメリカ食品医薬品局FDAや厚生労働省の認可は取得していません。
発売されてから10年以上経っていますが「しこり形成」「マンモグラフィーで判別しにくい」という以外のトラブルの報告は無いようです。(2023年2月現在)

サイズと料金

シリコンバッグによる豊胸では料金は大きさに関係ないのですが、ヒアルロン酸注入の場合は注入量と料金は正比例します。
1ccあたりの料金となりますので、大きくすればするほど高額となります。はっきり言って10cc程度の注入では見た目には殆ど変化がありません。
最低でも片胸で30ccは必要です。 1カップ(例えばBカップからCカップ)大きくするには片胸で50cc前後は必要になります。
ですから「1カップ程度のバストアップ」や「授乳で萎んでしまった部分だけをふっくらさせたい」というような患者様には向いています。
特に欧米人向けの豊胸手術では3~4カップアップは当たり前ですので、 欧米では金銭的にもシリコンバッグの方が安くなってしまうので、あまり行われていないようです。もちろんフランスやアメリカではヒアルロン酸豊胸は禁止されている、という状況もあります。
日本国内ではシリコンバッグ豊胸よりも圧倒的に患者様が多い治療方法となっている印象です。(正確なデータを持っている訳ではありませんので、あくまでも僕の印象です)

実際の治療

殆どの患者様に「トライアル注入」を行います。トライアル注入とはいきなりヒアルロン酸を注入するのではなく、「ヒアルロン酸の代わりに薄めた麻酔液(0.05%キシロカイン)をバストに注入」して実際の大きさや仕上がり具合を患者様に鏡で見てもらい「事前に必要注入量を決定する」やり方です。
トライアル注入で決定したヒアルロン酸をその直後(もしくは後日)に注入していきます。あまりに患者様のご希望のバストが大きい場合は、CRF自己脂肪注入やシリコンバッグ豊胸の治療を検討してもらっています。
ハイアコープを16~18ゲージの太めの針で皮膚を1~2ヵ所刺して、乳腺下を中心として注入します。
既にトライアル注入で必要量が分かっていますので注入中に料金が高くなってしまう心配もありません。注入自体の時間は両側で30分程度です。
注入後はバスト全体をマッサージしてヒアルロン酸をなじませて、内出血予防のためにバスト全体を冷却し、圧迫包帯を巻いて帰院してもらいます。
圧迫包帯は当日シャワーを浴びる際に外してもらいます。皮膚に刺した針の穴にはテープを2~3日貼ってもらいます。縫合や抜糸は不要です。
当日はテープの部分が剥がれないように気をつけてシャワーを浴びてもらいます。浴槽への入浴は翌々日から可能です。
トライアル注入と別の日にヒアルロン酸を注入する場合は、あらかじめ局所麻酔を行ってから同様に注入します。

Before & After




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トラブル、副作用

1)しこり、被膜形成

注入されたヒアルロン酸は異物反応による被膜を形成して「しこり」として触れる可能性があります。特に1ヵ所に大量に注入されるとしこり形成が起きやすくなります。しこり自体は悪いものではないのですが、患者様ご自身で胸を触れると「乳がんではないかしら?」と心配になる事があります。超音波エコーで検査すれば乳がんでは無いことは直ぐに分かるのですが。気になる場合はヒアルロニダーゼというヒアルロン酸を分解する薬剤を注射してしこりをなくすことも可能ですが、しこりが大きかったり、数が多いと非常に高額になってしまいます。外科的にしこりの部分のヒアルロン酸を吸引する方法もありますが、100%吸引することは非常に難しいです。適量を乳腺下の層に均一に注入するのがベストですが、中々難しい問題です。
しこりになった部分は時間が経っても(数年経っても)吸収されないで残る場合が多いです。

2)アレルギー反応

1/10,000〜15,000人くらいの割合でアレルギー反応が現れると言われています。
実際に皮膚への注入(法令線や眉間のしわ、など)ではアレルギーを経験したことがありますが、豊胸目的では経験はありませんし、見聞したこともありません。
一般的な症状は「赤み」「腫れ」「しこり」「感染」などです。これらの症状が現れた際には出来るだけ早く検診を受けて頂きます。
ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)やステロイドで対応します。

3)ヒアルロン酸の移動

胸を圧迫するような事象(マンモグラフィーやうつ伏せの運動、マッサージ、性行為等)によって乳房内のヒアルロン酸が移動してしまう可能性があります。
注入当初はキレイな形のバストだったが、徐々にいびつな形態のバストになってしまう可能性があります。実際、当院の患者様でもそのような方がいらっしゃいます。過度の運動、圧迫などは控えて下さい。

4)腋窩リンパ節の腫脹

リンパ管に取り込まれたヒアルロン酸が腋窩リンパ節に集まって腫脹(腫れている状態)する場合があります。治療が必要になることは殆どありません。このリンパ節腫脹はシリコンバッグ豊胸の際に起こり得ます。

5)乳がん検診での紛らわしさ

特にマンモグラフィーの際に注入されたヒアルロン酸の影響で乳がんとの判別が困難となる可能性があります。超音波エコーでの検査では比較的悪影響は少ないのですが、乳腺内に注入された場合には判別が難しくなる可能性があります。これが主な理由となってアメリカやフランスでは乳房へのヒアルロン酸注入は禁止です。(2023年2月現在)

6)母乳への混入の可能性

豊胸目的で乳房内に注入されたヒアルロン酸が母乳に混入して、乳児が摂取してしまう可能性は否定出来ません。乳児がヒアルロン酸を摂取した際の安全性はもちろん確立されていません。

7)乳がん惹起の可能性

複数回の同一部位へのヒアルロン酸注入で炎症が惹起され,それが乳がんの発生率増加につながるのではないか?という懸念を呈している論文があります。実際のところは明白には分かっていません。

超音波エコーによるヒアルロン酸の画像

ヒアルロン酸注入後の乳房の超音波エコー像です
乳腺と大胸筋の間の黒い(低エコー)部分が注入されたヒアルロン酸です。
この患者様は比較的均一に乳腺下に注入されており、理想的な注入状態です。(ただし、このような状態は比較的少ないです)


複数の楕円形の黒い部分(低エコー)が写っている超音波エコー像です
黒く写っている部分が注入されたヒアルロン酸です。この患者様の場合は均一に注入されている訳ではなく、「房状」のものがいくつか集まっている状態と考えて下さい。一般的にはこのような状態になっている患者様の方が多数です。この房状のものが「しこり」として触知される場合が出てきます。ヒアルロン酸以外の注入物(アクアフィリング、アクアリフト、ロスデライン、アクティブジェル、アメイジングジェル、整形外科用関節内注入用ヒアルロン酸など)でも同様に低エコー(黒く)で描出されますので、黒いからと言ってヒアルロン酸とは判断できない場合もあります。

FUJIFILM社製 ARIETTA50

施術費用

施術法 料金(税込み)
1ccあたり(ドイツ製ハイアコープ)※ただし、実際には10cc単位での使用となります
現在は新規の患者様には行っていません
3,300円

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診療案内