アクティブジェル、アクアフィリングなどの非吸収性異物の除去

バストへの異物ジェル注入でお困りの方へ

歴史

2014年ごろから突然導入された印象を持っています。
共立美容外科宇都宮院では当初から導入する予定が全く無かったので、輸入業者のプレゼンテーションを聞いた時は「何でまた非吸収性の異物注入をやり始めたのか?」と怒りにも近い感情を持ったことを憶えています。
ウクライナ製というのも胡散臭さに拍車をかけています。
「万が一の場合は生理食塩水を注入する事で注入したジェルが分解出来ます」という説明も訳が分かりませんでした。
日本に導入当初は「アクアフィリング」という製剤名だったと記憶していますが、その後名称がコロコロと変わっているようです。
現在は「Activegel アクティブジェル」という名称でメーカーのサイトで確認できます。

アクティブジェル(メーカーサイトより)

アクティブジェルの中身(メーカーサイトより)

連絡先はウクライナの首都キーフ(メーカーサイトより)

異物ジェルの注入の歴史は患者様の苦難の歴史です。
古くは1940年代からのシリコンジェル、パラフィンジェル、オルガノーゲンなどの異物ジェルを乳房や顔面、陰茎に注入して「変形」「しこり、硬結」「ジェルの移動」「ひきつれ、痛み」「発赤」「皮膚を破っての露出」「ヒトアジュバント病」などが引き起こされてきました。
1990年代後半には中国製やウクライナ製の「アメイジングジェル」という非吸収性物質による豊胸が行われ、やはりトラブルが続出して製造国の中国でも2006年に使用禁止措置が取られています。このアメイジングジェルの成分はpolyacrylamideポリアクリルアミドという物質で、これ自体には発癌性はないとされていますが、何らかの作用で分解されてpolyacrylamide→monoacrylamideモノアクリルアミドになると発癌性が現れてきます。
2000年代ではヒアルロン酸製剤やハイドロキシアパタイト製剤(レディエッセ、日本では未認可)が普及して一般的な美容医療となりましたが、未熟な注入による皮膚壊死や失明のトラブルの危険性も皆無ではありません。アメリカやフランスではヒアルロン酸による豊胸術を禁止しています。

アクティブジェルの成分

polyamideポリアミド、という成分のようです。
前述の中国で製造されていたアメイジングジェルの成分のpolyacrylamideポリアクリルアミドよりは「まし」かな?という認識です。
polyamideポリアミド自体に発癌性があるとは立証されていません。
非吸収性の異物であることには変わりありません。
安全性が確立されていない物質を体内に入れるのは誰でも嫌だと思います。
食べ物だって食品添加物(=ほぼ発がん性物質)だらけのヤマザキの「ラ◯チパック」など食べたいと思いませんよね。

アクティブジェルなどによるトラブル、症状

共立美容外科宇都宮院ではもちろん、僕自身はアクティブジェルの注入経験はありませんが、他院で注入された後のトラブルとしては「乳房の疼痛」「乳房の腫脹」「感染」「ジェルの移動」などが報告されています。
授乳をきっかけに疼痛や腫脹や感染が起きる事が多く報告されていますので、乳管からの逆行性感染も指摘されています。
死亡例は知りませんが世界中でかなりの数のトラブルが発生しているようです。
韓国の学会でも使用自粛勧告が出され、その後日本でも2019年4月25日付けで美容外科学会等4団体が共同声明を出しています。
https://www.jsaps.com/docs/info/20190425_hokyo.pdf
日本の厚生労働省ではもちろん認可されていない注入製剤ですので、トラブルに対しての公的な支援はありません。

術中のアクアフィリング、黄白色の粘度が非常に高いジェルでした。粘性が高く吸引チューブが詰まってしまいました

吸引瓶の上方の黄白色の塊がアクアフィリングです。実際には粘性が高くアクアフィリングだけを吸引するのは困難だったので、生理食塩水を注入して粘度を下げて吸引しました。実際の吸引量は180cc(吸引総量は350ccの内、生理食塩水を170cc使用)と推定されました。(患者様は150cc注入されたと言っていました)

術前の超音波エコーでは乳腺下(大胸筋上)に明瞭な層となって写っています。エコー画像だけ見ると「シリコンバッグ?」とか「異常に滑らかに注入されたヒアルロン酸?」と間違えそうです


診断・検査

先ずは超音波エコーによる異物の存在部位の確定が重要です。可能であればMRIなどの検査も実施したいところですが、大学病院や総合病院レベルでないと難しいのが現状です。
超音波エコーを導入していない医療機関での診察や治療は論外です。
豊胸用ジェルを通常は乳腺と大胸筋の間に注入しますが、乳腺が無い場所(乳房辺縁)では直接皮膚の下に注入されています。また、大胸筋内や乳腺内に注入されている可能性も十分にありますので、超音波エコーで確認します。
乳房の疼痛や腫脹がある場合は積極的に血液検査を行って感染の有無や起炎菌の同定を行います。

共立美容外科宇都宮院ではFUJIFILM社製のARIETTA50を導入しています

治療・除去

1)アクティブジェルだけを除去する場合
局所麻酔下にIMF乳房下縁(アンダーバストのライン)に沿って数センチの切開を加え、そこから乳腺と大胸筋の間のスペースにアプローチして、ジェルを除去します。内部を十分に洗浄してペンローズドレーンを留置して傷口を縫合します。腫れや出血予防のためにバスト全体をスポンジと弾性包帯で1週間固定します。
欠点はジェルが無くなった後のスペースが癒着する過程で「バストの均一性が乱れる」「乳房表面にシワが出来る」「乳輪乳頭が下垂する」などのリスクがあります。

2)アクティブジェルを除去すると同時にシリコンバッグを挿入する場合
上記1)でのリスクを回避する手段としてジェルを除去すると同時にシリコンバッグ(お勧めはモティバエルゴノミクス)を挿入してしまう方法です。この場合は局所麻酔ではなく全身麻酔での治療となります。やはりIMF乳房下縁(アンダーバストのライン)に沿って数センチの切開が必要となります。
欠点は感染を起こしていた場合はジェルを除去しても感染が完全には治らず、新たに挿入したシリコンバッグが感染源となってしまう事です。

3)アクティブジェルを除去すると同時にCRF自己脂肪注入する場合
全身麻酔での治療となります。やはりIMF乳房下縁(アンダーバストのライン)に沿って数センチの切開を加え、ジェルを除去した後に大腿部などから採取したCRF(コンデンスリッチファット)を主に皮下に注入する方法です。アクティブジェルによってすでに乳腺と大胸筋の間にスペースが形成されていますので、その部位には脂肪注入は出来ません。結果的に脂肪注入する部位は「皮膚の下」がメインとなります。やはり、ペンローズロレーンの留置が必要となります。アクティブジェルが感染を起こしていても、脂肪注入する皮下とは直接接していないので、注入された自己脂肪が感染する危険性は比較的少ないと考えられます。

4)アクティブジェルを除去した後に同時にではなく、後日に豊胸を行う場合
上記1)の手順でアクティブジェルを除去します。その後6ヶ月以上の期間を空けてからシリコンバッグやCRF自己脂肪で豊胸を行います。6ヶ月以上の間隔を空けることによって感染のリスクを最小限に減らすことが出来るとともに、除去部位の瘢痕がある程度軟化する時間が得られます。欠点は上記1)で記載した欠点の他に「6ヶ月の期間は貧乳になってしまう」「アクティブジェルを除去したスペースが癒着、瘢痕化して固くなる」「後日に行うシリコンバッグ挿入やCRF自己脂肪注入が癒着のためにやりにくい可能性がある」などが考えられます。2回目の手術はもちろん全身麻酔での治療となります。

料金

料金 備考・院長コメント
カウンセリング料 ¥3,300 全例、他院での治療後の相談となりますのでカウンセリング料金を戴いています。
超音波エコー検査 ¥5,500
血液検査 ¥11,000〜 感染状況を調べる目的です。全身麻酔の術前検査ではありません。
感染菌同定検査 ¥11,000 検査結果が出るまでに1週間程度必要となる場合があります。
アクティブジェル除去のみ ¥330,000(両側)〜 原則、IMF(アンダーバスト)切開となります。
アクティブジェル除去と同時のシリコンバッグ挿入 ¥1,012,000(両側、シリコンバッグ代含む) シリコンバッグはモティバエルゴノミクスを原則使用します。挿入部位は原則、乳腺下となります。
アクティブジェル除去と同時のCRF脂肪注入 ¥1,342,000(両側、脂肪採取代含む) 脂肪採取部位は原則大腿後面となります。後面からの脂肪採取で足りない場合は大腿前面からも採取する場合があります(別途¥110,000)
アクティブジェルを除去した後に2期的にシリコンバッグを挿入 ¥792,000(両側) シリコンバッグはモティバエルゴノミクスを原則使用します。挿入部位は原則、乳腺下となります。
アクティブジェルを除去した後に2期的にCRF脂肪注入 ¥1,112,000(両側) 脂肪採取部位は原則大腿後面となります。後面からの脂肪採取で足りない場合は大腿前面からも採取する場合があります(別途¥110,000)
全身麻酔のための術前検査 ¥22,000 血液、尿、心電図、胸部レントゲン
全身麻酔代 ¥110,000(手術時間4時間以内)~132,000(手術時間が4時間以上) 麻酔専門医が担当します。