ボトックスとはボツリヌス菌という細菌のA型毒素から製造したアラガン社の薬品名です。(毒素にはA〜G型までありますが、臨床的に有効なものは主にA型です)
一般名は「ボツリヌス菌A型毒素製剤」です。
ボツリヌス菌は食中毒を起こす嫌気性細菌として有名です。食中毒を起こす細菌というと危険なイメージがありますが、ボトックスはその毒素から作った安全な「ワクチン」です。
インフルエンザの予防として接種するインフルエンザワクチンと同じ原理でボトックスも使用します。
美容目的では1999年頃からアメリカで大人気となり、2001年からは日本でも普及しています。眼科や神経内科でのけいれん治療目的では1996年から認可が下りており、現在では保険適応となっています。
2009年1月21日からは美容目的(眉間のしわ治療だけの適応ですが)で厚生労働省の認可が下りました。
製品には元祖アラガン社のボトックス、イギリスのイプセン社のディスポート、韓国製のニューロノックス、2011年からはドイツのメルツ社のゼオミンなどが販売されて世界的に普及しています。
アラガン社ボトックスのみが日本国内での認可を受けています。
手軽さと効果の高さで人気のボトックス注射ですが、その最新番が 『ゼオミン』です。
まだ、日本の厚生労働省での認可は取れていませんが、FDA(アメリカ食品医薬局)の認可やCEマーク(EU圏での認可)はもちろん取得しています。
今までのボツリヌス菌毒素製剤(ボトックス、ディスポート、ニューロノックスなど)との大きな違いはその製造過程で余計なタンパク質が一切含まれていない(free of complexing proteins)という事です。この事によって「抗体形成による効果の低下、持続期間の短縮」という問題が軽減されます。
抗体形成とはボツリヌス菌毒素製剤を繰り返し使用した場合「患者様によっては抗体(抵抗力)ができてしまい、それによって効果が低くなったり、効果の持続期間が短くなる」という現象です。
この問題を解決したのが、ゼオミンなのです。当院では顔面の表情シワの治療では特別な理由が無い限りゼオミンを第一選択としています。
上記の理由で、抗体形成が理論上起こりませんので、何度繰り返し注射しても毎回同じ効果が理論上得られます。ゼオミンならば最初は少なめに注入しておいて、まだシワが完全に消えていない場合は2週間後以降に追加注入する、という治療方法が可能です。
これが、他のボツリヌストキシン製剤(ボトックス、ディスポートなど)では製品説明書に「1回注入したならば同部位への注入は最低3ヶ月以上間隔を開ける事」と明記されています。これでは「せっかく注入したけれども効果が少し足りない、左右のアンバランスがある」などという患者様に対応出来ません。
短期間のうちに反復注入が可能、というのがゼオミンの最大のメリットです。
ゼオミンは他のボツリヌストキシン製剤と製造過程が異なっており、そのために長期常温保存が可能です。クリニックが停電になって冷蔵庫が機能しなくなっても心配ありません。
ゼオミン以外のボツリヌストキシン製剤は冷蔵、冷凍保存が必要な製剤で海外から輸入されています。その輸入行程で温度管理が損なわれる可能性も排除出来ません。ゼオミンはそのような心配もありません。
ほとんどのクリニックではアラガン社ボトックスや非常に安価な韓国製品を使用していようです。当院の薬剤の選択方針として「原則、厚生労働省の認可のおりたものを使用」しています。
しかし、ゼオミンに関しては交代形成が出来にくいというメリットがあるため、厚生労働省未認可ですが採用しています。(FDAやEUの認可は受けています)
もちろん、厚生労働省で認可されているアラガン社ボトックスも導入しています。
また、ゼオミンは輸入価格が他の製剤と比べて非常に高かったのですが2017年頃からコストが下がりアラガン社のボトックスとほぼ同じ価格で提供出来るようになりました。
ボトックス | ゼオミン | ディスポート | ニューロノックス | |
---|---|---|---|---|
宇都宮院導入 | ○ | ○ | × | × |
製薬会社 | アイルランド アラガン社 |
ドイツ メルツ社 |
イギリス イプセン社 |
韓国 メディトックス社 |
厚生労働省認可 | ○ | × | × | × |
FDA認可 | ○ | ○ | ○ | × |
抗体形成 | 起きる | 理論上起きない | 起きる | 起きる |
反復注入 | 初回注入から3ヶ月以上間隔を開ける事を推奨 | 2月週間程度の間隔を開けて追加注入が可能 | 初回注入から3ヶ月以上間隔を開ける事を推奨 | 初回注入から3ヶ月以上間隔を開ける事を推奨 |
薬剤の拡散性 | 比較的限局性 | 比較的限局性 | 比較的拡散性あり | 比較的限局性 |
効果の持続 | 4〜6ヶ月(厚労省に提出のデータでは3カ月) | 4〜6ヶ月 | 4〜6ヶ月 | 4〜6ヶ月 |
価格 | 標準(ボトックスを基準としています) | 高価だったが2017年頃より標準的となった | やや安価 | 非常に安価 |
美容医療分野で使用するボトックス注射には大きく分けて以下の3つの効能があります。
神経が筋肉に作用する部位(神経筋接合部)でのアセチルコリン(神経伝達物質の1つ)の放出を抑制して、結果的に筋肉の動きを抑えて、けいれんや表情筋によるシワを改善する目的で使用します。
大量に注射する事により、筋肉を抑制するだけでなく、筋肉のボリュームを小さくします。顔の輪郭(エラ部分の咬筋)や脚を細くする(ふくらはぎのヒラメ筋など)目的で使用します。
輪郭形成のページを参照
脇の下や手の平などの多汗症の原因となっているエクリン汗腺からの発汗を抑える目的で使用します。これもアセチルコリンの働きによります。
多汗症治療のページを参照
この3つの効果以外にも「ニキビを抑える効果」や「皮膚をすべすべにする効果」「ケロイドを治す効果」などもあると言われています。
ボトックスは熱に弱い性質があります。ですから、注射後48時間は治療部位へのレーザー照射や長時間の入浴、サウナ、体温が上がってしまうスポーツなどは控えて下さい。ヘアードライヤーによる加熱も気を付けて下さい。
注射当日から患部のマッサージやエステでの施術を受けたりする事は控えて下さい。
注射当日は患部に注射針の穴が開いています。アルコールや消毒薬の塗布は控えて下さい。アルコールと言っても過度でなければ飲酒は構いません。
ボトックス注射はあくまでもワクチンですので一生涯残ってしまうようなレベルの後遺症はありません。以下に挙げている副作用も一時的なものですし、熟練した医師の施術で十分に防ぐことが出来るものです。
「眼瞼下垂」といって目が開けにくい状態となります。額の横シワ(前頭筋)に過度にボトックスを注射した事による間接的な眼瞼下垂は起こり得ます。
「生まれつきの眼瞼下垂やまぶたの皮膚のタルミが原因で代償性に額の筋肉に力を入れて額にシワを寄せる事によって上まぶたを引き上げている」方に対して、額(前頭筋)に過度にボトックス注射を行うと「額のシワは消えたけれども、逆に上まぶたの皮膚が持ち上がらなくなってしまい、結果的にまぶたが開けにくい(眼瞼下垂)状態」となってしまう可能性が大いにあります。
ですから、代償性に額にシワを寄せているタイプの方でボトックス注射を行う場合は「眉毛直上へのボトックス注射を避けて額上部にのみ注射を行い、2週間程度様子を見て眼瞼下垂にならない事を確認してから、もう少し眉毛近くへの注射を追加する」という方法を採用しています。
眼瞼下垂の治療に関しては眼瞼下垂のページを参照
額の筋肉にボトックス注射を行った場合に「前頭筋が萎縮(薄く)してしまい、相対的に眉間部の筋肉(皺眉筋、鼻筋など)が盛り上がったように見えてしまう現象です。このような場合には額だけでなく一緒に眉間部へのボトックス注射を行う事で解消できます。
首の縦シワ(広頚筋)を改善する目的で過度に首部に注射した際に起こり得ます。物を飲み込む際の筋肉にまで作用して、嚥下障害を来します。これも過度の注射を防ぐ目的で少しづつ注射をする事で防げます。
口周囲の筋肉に注射をする事で起こり得ます。「鼻下の縦シワ」や「下がった口角をアップする」などを治療する際に起こり得ます。これも的確な部位への注入や過度の注入をしない事で防げます。
ガミースマイルや鼻に出来るシワを直す目的で鼻翼部(上唇鼻翼挙筋)などにボトックス注射を行うと、「垂れている鼻水をすする様な動作がしにくい」状態になる可能性があります。日常生活には殆ど問題ありません。
顔中にボトックス注射を行うと「シワは無くなったが無表情になってしまう」可能性があります。何でもそうですが「やり過ぎは禁物」です。ただし、欧米人は無表情になることを気にしない方が多いそうです。
額のシワをボトックス注射で治療する際に、シワのある部分にだけ注射して、額の外側(こめかみ付近)へ注入しないと眉毛の外側だけが動く状態になります。そうなると、眉毛の外側だけが持ち上がり「怒った顔」になってしまう場合があります。
額の治療の際は前頭筋全体をしっかり治療します。ただし、欧米人では逆に「眉毛の外側がアップした顔が好まれる」傾向にありますので、治療前に患者様の要望を十分に聞いてからボトックス注射を行う事が大切です。
元々下眼瞼の筋肉(眼輪筋)がたるんでいる老齢の方(一般的には80才以上)にボトックス注射を行うと、眼輪筋が一層弛緩してしまい、下眼瞼が「あっかんべー」の状態になる可能性があります。
老齢の方の下眼瞼に注射する場合はピンチテストなどを行って、眼輪筋の緊張度合いを調べておいてから注射します。
ボトックスを定期的に連続して注射していると「もう6ヶ月以上経過してボトックスの効果は無くなっているはずだが、表情シワが無くなったまま」という場合が時々あります。このような現象を廃用性萎縮と呼んでいます。
これは全ての表情シワに見られる訳ではなくて、主に前額の表情シワ(おでこの横ジワ)の場合に起こります。これは前頭筋という筋肉ですが、この筋肉は元々は厚みの薄い筋肉ですので、「筋肉の麻痺」という効果以上に「筋肉の萎縮」という効果まで得られてしまうために廃用性萎縮が起きる可能性があります。
この状態が一生涯続くかどうかは分かりませんが、「1〜2年は治療しなくても表情シワが気にならない」とか「1年に1回のボトックス注射で済んでしまう」という患者様がある程度はいらっしゃいます。前額以外では目尻などの比較的薄い筋肉の表情シワの場合でも起きる可能性があります。
抗体という言葉は聞いたことがあると思います。
免疫反応の一種で「何らかの抗原(薬品や食品成分、異物など)に対して、それと特異的に反応する物質」の事です。この場合の抗原はボトックスです。
ボトックスに対して抗体が体内で形成されてしまうと、この抗体がボトックスの作用を弱めてしまい「初めてボトックス注射をしたときはしっかり6ヶ月程度の効果が得られたが、2回目に注射した時は効きが悪かったり効果の持続が短かったりする」という現象が現れてしまいます。いわゆる「ボトックスに対して体内で抵抗力が付いてしまう」状態になる可能性があると言うことです。
ゼオミンというドイツのメルツ社の製品は、その製造過程で余計なタンパク質が製品に含まれていないために理論上「抗体形成」が出来ない、と言われています。 当院では2011年11月から積極的に導入しています。
BOTOX(アラガン社)、ニューロノックス(メディトックス社)>ディスポート(イプセン社)>ゼオミン(メルツ社)
額(前頭筋)と眉間(鼻根筋と皺眉筋)のシワを改善します。マジックペンで印をつけた部位の皮下にボトックスを注射します。世界最細の34G針を使用しました。額には12単位、眉間には20単位使用しました。
治療前(2018/4/3)の前額部のシワの状態。
治療後3日目(2018/4/6)の状態。
治療後1週間後(2018/4/10)の状態。
眉間にシワの治療前(2018/4/3)です。
治療後3日目(2018/4/6)です。
治療後1週間(2018/4/10)の状態です。
左は額にシワを作っている状態の写真です。 右は眉間に皺を作っている状態です。 ボトックスはシワに直接注射を行うのではなくて、シワを作っている原因の筋肉(前頭筋、眼輪筋、頬骨筋群、鼻筋、趨鼻筋など)に直接注射を行いますので、シワに沿って注射は致しません。
アゴに「梅干しの種」様にシワが出来ています。原因はオトガイ筋の過度な緊張です。
ボトックス12単位を注射して、ここまで改善しました。
70歳代の患者様で首の縦シワが目立ちます。原因は広頚筋です。
X印の皮下にボトックスを注入しました。全部で16単位です。
約3週間後、明らかに縦シワが改善しました。
1)マーキング
×とマーキングしてあるのが「口角下制筋」です。口角は口角を下げる力(口角下制筋)と口角を上げる力(上唇鼻翼挙筋)のバランスによって位置が決まります。 この口角下制筋を抑制する事によって相対的に口角をアップさせるのが「口角ボトックス」です。 口角下制筋は通常の会話や食事には影響を与えない筋肉です。
2)治療前の状態
50代前半の方ですが、極端に口角が下がっている訳ではありません。
3)治療後約3週間
写真で比較すると口角が少しアップしているのが分かります。 口角が殆ど下がっていない20代、30代の患者様にはあまり適応が無いと思います。 明らかに口角が下がっている40代以降の方にお勧めしています。
世界最細の34G針使用。1ヶ月以内の同部位への追加注入無料。
価格 | |
---|---|
額 | 25,000円 |
眉間 | 25,000円 |
両目尻 | 25,000円 |
両目の下 | 25,000円 |
鼻 | 25,000円 |
鼻(縦シワ) | 25,000円 |
ガミースマイル(歯茎が見える) | 25,000円 |
アゴ(梅干し様のシワ) | 25,000円 |
口角をアップ | 25,000円 |
首(縦シワ) | 25,000円〜 |
★キャンペーン 2ヶ所以上同時に治療すると 2ヶ所目半額、3ヶ所目無料 |
2ヶ所同時 37,500円 3ヶ所同時 50,000円 |
※薬剤の選択:アラガン社ボトックスでもメルツ社ゼオミンでも同じ料金です。
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